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ずくだしてやらねえじゃ、食えねえよ!小谷村の伝統食「栃餅」をご存知?

こんにちは。協力隊の宮下です。

私が担当している大網(おあみ)地区は、小谷村の最北端に位置する地区で、

バス停からは百名山・雨飾山がどーんと見えて、冬には
3mを越える雪が積もります。

人も自然も厳しいけれどあたたかい、大好きな地域です。

さて、この大網。昔は自然条件が厳しくなかなかお米を採ることが難しい地域でありました。

そこで考えられたのが「栃餅」。地区のおじちゃんおばちゃん達は、毎年秋になると奥山へ入り

栃の実を拾いに行きます。

くりまんじゅうによく似た茶色のつるりとした栃の実は、美味しそうな見た目と違って、アクが強く、

とてもそのままでは食べれません。

そこで昔の人は囲炉裏から出る灰を使ってアク抜きをし、もち米と一緒に蒸して、ついてお餅にし、

お米の代用食として大事に食べるのです。

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小谷村の盆踊りの歌詞に「大網、栃餅。深原、脚絆。来馬、歩荷で稼ぎがいい」と残っているほど、

大網の栃餅は村の伝統特産品。

33年前に「とちもちの会」が発足し、原料の生産、加工、販売を行ってきましたが、高齢化により

8年前に一度途絶えてしまいました。

けれども、この栃餅づくりの伝統と技を無くしてはならぬと思った、移住者をはじめとした若いメンバーが

もう一度おばちゃんたちからその技を引き継ぎ、今も作り続けています。

私も今年でアク抜き3年生ですが、今年の栃の実は成りが悪く粒が小さいものばかりで上手くできるのか、

おっかなびっくり進めています。

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栃の実の加工は、なかなかに手間がかかり「ずく」をださないとできません。

毎年9月のはじめ頃になると奥山へ行き、熊に怯えながらも地面に落ちた実を拾います。

拾った実は2~3日水につけて虫抜き。その後1カ月ほど天日干しにし、ぶつけるとカラカラという高い音が

鳴るまで置く。

それからもう一度水につけて、皮と実の間に隙間ができてペコペコするまで置く。

そこから今度は、お手製の栃むき機で一粒一粒皮を剥く。さらにその後、流水に10日間ほどさらします。

ここまでできてやっとひと段落し、ここからが一番重要な灰を使ったアク抜き。

栃の実のアクの抜け方の様子を見ながら、温度と灰の量を手加減で調整(上手にアクが抜けると、

実を舐めた時にピリッとした痺れが舌にきます)。

灰につけたまま1週間おいて、水で洗って粗皮を取ったら、やっとアク抜きが完了!

その栃の実をもち米と共に蒸し上げつきあげて、やっとやっと栃餅は完成です。

毎回味と風味が変わるのでひとつとして同じ味はなく、家によって色も味も様々です。

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つきあがった栃餅は、独特の色と風味で、初めて食べる人には少しクセがあるかもしれません。

でも、外側をカリッと焼いて半分に割り、間にあんこを挟んで食べると、

ふんわり香ばしい香りともっちりとした食感にうっとりすること間違いなし!

なぜかちょっとたい焼きのような風味もします。

現在、大網の栃餅を販売しているのは、任意団体くらして(http://kurashite.com/)です。

興味のある方はぜひご連絡ください。

それ以外だと、冬の大網を訪ねてきた時に運がよければ食べられるかもしれません。

大網のふもとにある姫川温泉につかって大糸線を走るディーゼル車を眺めるのもまた一興。

栃餅を探しつつ、ぜひ一度大網にも出かけてください。

関連リンク
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◉むらのしるべ

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大網の若い衆を中心に、大網での暮らしや生活、伝統の技を残して伝えていく取り組みをしています。
「よみもの」では季刊誌も読んでいただけます。

◉山のふところ

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私、宮下が大網・姫川温泉での、山や人や獣との日々の暮らしを発信しています。