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茅葺職人の巨匠と、茅葺屋根の上で出会った

こんにちは。小谷(おたり)村地域おこし協力隊のゆりです。

小谷村には風情豊かな古民家が点在しています。
美しく時に厳しい自然の中でたくましく立ち続けてきた伝統建築物で、そのたたずまいは郷愁を誘い見る者の心に響きます。
またその味わい深い伝統的な外観だけでなく、エアコンのなかった昔からその土地の気候風土に合った実用性も兼ね備え、
夏は涼しく冬は暖かい、耐久年数も長いと大変エコな建築物でもあります。

そんな小谷の古民家を覆っているのが茅葺き屋根です。
小谷の茅葺き屋根はコガヤ(カリヤス)を使い、茅葺き屋根は60年に一度葺き替えます。
茅葺き職人は先人の技を60年後葺き替える時に見て、「ここで苦労したんだ」、「こういうやり方もあるのか」
など学ぶことがあるそうです。

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刈り取り時の茅場の風景

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春先の野焼き

茅は茅場で育てられ、毎年雪が降る前に刈り取り、乾燥させ茅葺き屋根用の茅を選定します。
茅場は春に野焼きを行い、維持されてきました。
茅場は水源を保ち、様々な生き物植物の住処であると同時に、そこで成長する茅は二酸化炭素を吸収し、
幹だけでなく多くは根にため込みます。また野焼きによって大地に残った炭素は大気に放出されません。
そして屋根に葺かれた茅は炭素を長期間固定した後、葺き替え後の古い茅は田畑の堆肥となり、土へ帰ります。

茅葺き文化はこのように地球温暖化の原因となる温室効果ガスの減少に貢献し、無理なく長期で持続可能な
まさにこれからの時代に必要な要素であります。

(日本茅葺き文化協会https://www.kayabun.or.jp/20201218/20201217.pdfより参照)

茅葺・茅採取はユネスコ無形文化遺産に登録され、今その重要性は見直されつつあります。

さて小谷村では塩の道沿いにある沓掛の古民家を大改修中です。
2月の青空が広がった快晴の日、その古民家の茅葺き屋根に茅葺き職人の巨匠がいらっしゃると伺い会いに行ってきました。

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この真ん中の脚立を登って上に上がります。
最初は怖くてたまらなかったのですが、上がってみるとなんと素敵な山の冬景色が広がり恐怖心は興奮に変わりました。
足場の丸い木が何本か平行にとりつけてあるので、その上を歩き屋根の上を移動します。

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茅葺き屋根の葺き替えの仕上げにあたる「しころ」という棟納めの部分を刈り込みしている、
株式会社小谷屋根会長の松澤敬夫さんにお会いすることができました!
茅葺き職人歴65年の大ベテランで伊勢神宮の茅葺き屋根も葺き替えた茅葺き界のレジェンドです。
温和な表情のとてもかっこいい職人さんで、優しく色々と説明をしてくださいました。

この日作業していたしころ部分の刈り込み。
葺き替えた茅の長さを揃え、先を切っていく作業です。
まずは槌を使ってある程度長さを揃えていきます。ひたすらトントントン。

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そしてハサミで茅の先を揃えて切っていきます。
ハサミで茅を切る音は一定のリズムで冬山に響き、何とも言えない心地よい気分になります。
こちらの動画でどうぞ体験してください!



使用しているハサミも、刃に近い部分の木の持ち手にご自身で銅線を巻き、
使い込んでいくことで世界にただ一つの道具になるそうです。

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私も刈り込みを体験させていただきましたが、揃えて切るのが難しくガタガタになってしまいました。
このような体験を気前よくさせていただき、本当に良い経験となりました。
こちらの古民家を見るたびに、屋根のあの辺りを自分が刈ったのだと感慨深く思い起こすことになるでしょう。

今回は素晴らしい天候と景色の中、巨匠の技を間近で拝見させていただきとても感動しました。
このような機会をいただき、本当に感謝いたします。

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みなさんもどうぞ古民家と茅葺き屋根を見に小谷村へお越しください!